医療の最前線を伝えるために――はじめまして、総合診療医のDIOです
家庭医ということ。総合診療医ということ。
はじめまして。総合診療医(家庭医)のDIOと申します。私は家庭医療専門医として、田舎で幅広い患者さんの診療をしています。X(旧Twitter)ではありがたいことに18,000人を超える方にfollow頂いています。総合診療や医学のトピックをわかりやすく解説することを目指していますが、「家庭医・総合診療医ってそもそも何なのか?」「家庭医とはどんな仕事をしているの?」「家庭医になったきっかけは?」といった疑問に答えながら、私自身の自己紹介・私の経験や考えをお話ししようと思います。興味をお持ちいただいた方は、ぜひX(旧Twitter @generection1)のフォローもよろしくお願いします!また、下記のボタンよりこちらのニュースレターの登録をよろしくお願いいたします。
総合診療医・家庭医って何?
総合診療医・家庭医は、医師の中でも比較的臨床の最前線に立ちながら、まだまだ専門家として十分に知られていない存在です。私がX(旧Twitter)アカウントを開設したのも、総合診療医(家庭医)という分野をより多くの皆さんに知っていただきたい、という思いからでした。

日本の住民1000人当たり、1か月に体調不良を訴える人が862人いて、そのうち総合病院の外来を受診される方が88人いるといわれています。
検診業務やワクチン外来などを含めると、このうちの900人程度をカバーする仕事を普段しております。
家庭医は、生まれたばかりのお子さんから高齢の方まで、まさに“ゆりかごから墓場まで”のあらゆる健康問題に対応します。内科や小児科、精神科など、いくつもの専門領域にまたがる相談を一手に引き受け、必要に応じて患者さんに最適な道(専門医の紹介や地域の支援など)をナビゲートする役割を担っています。
離島医療やへき地医療に携わるケースも多いですが、決して離島やへき地だけの存在ではありません。たとえば、
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「ちょっとしたできものができた」
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「子どもが朝、学校に行きたがらない」
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「ミルクの量はこれでいいの?」
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「妊娠中で薬をどうしたらいいかわからない」
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「祖母が最近怒りっぽくなった」
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「主人がタバコをやめてくれない」
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「そもそも病院に行くべきなのかわからない」
こういった幅広い悩みに寄り添い、必要とあらば病院・診療科を紹介し、必要があれば治療を行う。それが総合診療医(家庭医)の大きな使命です。身体や心の状態だけでなく、ご家族や地域、社会背景までも含めて総合的に考え、一人ひとりに合ったアドバイスや居場所づくりをお手伝いします。
日本ではまだ専門医志向(ある病気や臓器のスペシャリスト)が強く、医療の発展という観点では素晴らしい反面、「自分の専門分野以外はわからない」状況になってしまいがちです。もちろん、医学分野そのものが膨大すぎるため、一概に専門医志向が悪いとは言えません。ですが、「どの科に行けばいいのかわからない」「気軽に相談できる医師がいない」という悩みが増えているのも事実です。
私が総合診療医(家庭医)を志したのも、こうした問題を解消する糸口になりたいと考えたからです。そして総合診療医(家庭医)という存在を、より広く皆さんに知っていただきたいと思っています。
家庭医療は行動科学


突然ですが、私は家庭医療の本質は「行動科学」だと考えています。もちろん、内科・小児科・精神科・外科・整形外科・皮膚科など、幅広い領域を診るのが総合診療医の特徴でもあります。しかし、それらはあくまで結果として求められるものであり、本質は“人の行動を科学的に理解し、より良い方向へ導くこと”にある、と私は感じています。
アメリカの医師国家試験(USMLE)では、Behavioral Science(行動科学)は非常に重要な科目とされています。心理学や社会学、人類学などの知見を取り入れ、コミュニケーションや対人関係、リーダーシップなどを理論的に学ぶ学問領域で、医療の現場でも非常に役立ちます。ところが、日本の医師国家試験には行動科学の項目がないため、医師になるまでに体系的な勉強をする機会がほとんどありません。
「行動科学なんて知らなくても医療はできるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実際の臨床現場では、患者さんが「タバコをやめろと言われたけどあの言い方じゃ絶対やめたくない!」となってしまったり、医師や看護師同士のコミュニケーションがうまくいかずにトラブルになることもしばしばあります。ときには命に関わることもあり、だからこそ医療現場では円滑な人間関係の構築が重要になります。
行動科学をきちんと学んでおくと、「どうすれば患者さんとのコミュニケーションが円滑になるか」「どんな伝え方なら行動変容を促しやすいか」というヒントが得られます。優しい言葉かけだけでは解決しない問題も多々ありますが、それでも患者さんと医療者のギャップを埋め、互いに納得のいく形で治療やケアを進めることにつながるのです。
家庭医を目指したきっかけ
私が幼いころから抱いていた医師像は、いわゆる「街のお医者さん」でした。風邪を引いても、ちょっと体が痛くなっても、同じ診療所で同じ先生に診てもらう——そんな当たり前の環境で育った私は、「いつも身近にいて何でも相談できる医師こそが理想」だと感じていたのです。
医学生になってからは、学んでいくうちに「日本の高齢化社会の中では整形外科医が地域の役に立つのでは?」と考え、最初は整形外科に興味を持ちました。しかし、実際に臨床実習(ポリクリ)で手術を見学するうちに、「手術そのものより、患者さんのケアやリハビリ指導のほうに興味があるんだな」と気づきました。
ちょうどその頃、総合診療医という道があることを再認識し、多くの患者さんの役に立てる可能性に魅力を感じ、思い切ってこの道を選びました。実際、地方では総合診療医のニーズが高いにもかかわらず、数がまだまだ不足しているのが現状です。そうした問題を少しでも解決できればと思い、こうして記事を書いたり情報を発信したりしています。
まとめ
総合診療医(家庭医)は、「どの科に行ったらいいかわからない」「病院に行くべきかどうかも判断できない」といった日常的な悩みから、専門的な治療や高度医療が必要となるケースの架け橋まで、幅広くサポートする存在です。身体だけでなく心、そして家族や社会背景なども含めて総合的に理解し、患者さん一人ひとりにあった解決策を一緒に考えるのが私たちの仕事です。
行動科学をはじめとする様々な学問領域を活用し、人と人との関係をより良くすることに重きを置くのが総合診療医の大きな特徴でもあります。私自身、今後も多くの方々に家庭医療の魅力を知っていただき、医学生や研修医の方に「総合診療医(家庭医)」という進路を検討してもらえたら嬉しいです。
「家庭医って何?」「どんな症状で相談すればいいの?」といった疑問や、研修医の方で「総合診療はどんな研修ができるの?」と興味を持っていただいた方は、ぜひこちらでお気軽にご質問ください。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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